日付 1947年1月1日
題名 原子力問題
作者 仁科芳雄
掲載 世界 13(1) pp48-62
発行 岩波書店
編集 吉野源三郎
見出し
一、ビキニの試験
二、原子力の管理
三、原子力の将来
「原子力は平和目的に利用せられてのみ存在の意義がある。それでは原子力には果たしてそんな応用が可能であろうか。そこで誰でも先ず思いつくのが、これを 動力源として用いることである。原子爆弾のエネルギーを徐々に発生させることが出来たとすればどうであろう。その威力は火薬千トン乃至十万トンに相当する のであるから、これを動力源とすれば、産業又は文化上の利益は驚くべきものがある筈である。実際原子力は寧ろ徐々に発生させることの方が、爆発させるより も易しいのであるから、利用の可能性は多分に存在する。問題はそれが経済的に成り立つかということで決まる。」
原子爆弾が人類の消滅の危機を招来するので国際管理に置くべきであると主張する一方で、原子力の平和的利用については、積極的に進めるべきだと述べている。特に「原子動力」の安全性については、「原子力を爆弾として用いるには特別の手段を必要とするものであって、爆発させることの方が困難なのであるから、この心配は無用である」一方、「それよりも危険なのは前述の放射線であって、これは発生装置からも、それから取り出す物質からも多量に放射せられ人体に危害を及ぼすものである。これには充分の注意を払わねばならぬが、現在原子爆弾の製造工場ではこの害を防ぐことが知られているから、それと同様の措置を講ずれば好い」と危険性についても理解しつつ、楽観的であった。
参照
参考