日付 1947年1月
題名 原子力問題
作者 仁科芳雄
掲載 世界 1月号
形態 論考 雑誌
引用:
「原子力は平和目的に利用せられてのみ存在の意義がある。それでは原子力には果たしてそんな応用が可能であろうか。そこで誰でも先ず思いつくのが、これを動力源として用いることである。原子爆弾のエネルギーを徐々に発生させることが出来たとすればどうであろう。その威力は火薬千トン乃至十万トンに相当するのであるから、これを動力源とすれば、産業又は文化上の利益は驚くべきものがある筈である。実際原子力は寧ろ徐々に発生させることの方が、爆発させるよりも易しいのであるから、利用の可能性は多分に存在する。問題はそれが経済的に成り立つかということで決まる。」
原子爆弾が人類の消滅の危機 を招来するので国際管理に置くべきであると主張する一方で、原子力の平和的利用については、積極的に進めるべきだと述べている。特に「原子動力」の安全性については、「原子力を爆弾として用いるには特別の手段を必要とするものであって、爆発させることの方が困難なのであるから、この心配は無用である」一 方、「それよりも危険なのは前述の放射線であって、これは発生装置からも、それから取り出す物質からも多量に放射せられ人体に危害を及ぼすものである。こ れには充分の注意を払わねばならぬが、現在原子爆弾の製造工場ではこの害を防ぐことが知られているから、それと同様の措置を講ずれば好い」と危険性についても理解はしているが、楽観的な見方をしていた。
再録:
- 作者: 『世界』主要論文選編集委員会
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1995/10/06
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『世界』主要論文選 1946~1995 戦後50年の現実と日本の選択 岩波書店、1995年10月