日付 1946年5月18日
題名 アンテナ:山下将軍と原子爆弾
掲載 週刊新日本 第23号 5月18日号 p11
発行 新日本社(京橋区)
山下将軍(山下奉文 YAMASHITA Tomoyuki, 1885-1946)は、第二次世界大戦当時の陸軍大将。マレーの虎という渾名があった。米最高裁によって戦犯としてマニラで絞首刑に処せられた。
彼の遺書とされる文章中に原子爆弾への言及がある。「あの広島、長崎に投下された原子爆弾は恐怖にみちたものであり、それは長い人間虐殺の歴史に於てかって斯くも多数の人間が生命を大規模に然も一瞬の中に奪われたことはなかったのであります」ではじまるが、マニラにいる以上、原爆投下についてそれほど詳細な情報はなかったと思われる。
にもかかわらず「恐らくこの原子爆弾を防御し得る兵器は、この物質界に於て発見されないであろう」と指摘している。
そして「原子爆弾を落としてやろうといふような遺志を起こさせないような国家を創造する以外には、手はない」と考える。
敗戦の原因として「我に優れた科学的教養と科学兵器が十分にあったならば、たとへ破れたりとはいへ斯くも多数の将兵を殺さずに平和の光輝く祖国へ再建の礎石として送還することが出来たであらう」と、科学への信奉が見られる。
しかしこの「科学」は「戦争」や「兵器」とかかわるものではなく「平和」を目指すものだという見解が述べられている。
「科学とは人類を破壊に導く為の科学ではなく未利用資源の開発或は生存を豊富にすることが平和的な意味に於て人類をあらゆる不幸と困窮から解放するための手段としての科学であります。」
参考
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