日付 1946年8月
題名 原子核エネルギイ(火)
著者 荒正人
掲載 新生活
形態 評論 雑誌
原爆の被害に対して、「火」という視点から考察。アイスランド神話「旧エッダ」の火の神、ロキから書き起こし、そのあとはギリシア神話のプ ロメテウス、インドの火の神、アグニ、そして産業革命における火、さらに、第二の火としての電気について論じる。
引用:
「原子核エネルギーの登場は、ヨーロッパの滅亡ではなく、『旧エッダ』のように宇宙壊滅にまですすんでゆくのではないかという恐ろしい懸念をよびおこす。
日本再建の夢を、そういった大殺戮の発生のなかに託そうとしているひとたちは、それが、神神の黄昏・ラグナロクにほかならず、 両者の相打ちにまきこまれて、日本人と日本列島を一片の灰燼に帰するものであることを再思三省すべきである。
いまでこそ、二つの特異な元素にしか宿れぬけれども、やがてこの現代の火神ロキは、原子量の高い元素に、そして(これからは文学的空想だが)、一杯の水、一握りの土のなかにさえもやすやすと、身を潜めることができるようになるかもしれぬ。」
再録:
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日本現代文学全集〈第97〉平野謙・本多秋五・荒正人・佐々木基一・小田切秀雄集 (1966年)
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(1980年5月初版)